復興特別所得税関連の源泉徴収事務
(月刊「企業実務」2013年1月号より)
平成25年から49年までの25年間にわたり、給与や賞与、預貯金や債券の利子、株式や投資信託の配当金・売却益などに復興特別所得税が課税されることになりました。その概要と源泉徴収事務について説明します。
源泉徴収の対象と復興特別所得税額の計算方法
復興財源確保法28条1項の規定により、平成25年1月から平成49年12月31日までの間、所得税の納税義務がある個人は、その所得税と合わせて復興特別所得税を追加負担することになりました。
国に対して復興特別所得税の納付を行うものは、(1)所得税の確定申告を行う個人、(2)所得税の源泉徴収義務者です。会社経理に関しては、特に源泉徴収事務と年末調整が重要な業務となります。
所得税を源泉徴収すべき支払いは、所得税法・租税特別措置法に規定されていますが、主なものは次の通りです。
- 給与・賞与(現物給与を含む)、退職金
- 所得税法204条に規定される報酬・料金等
(弁護士、税理士、司法書士等に対する報酬、原稿料、講演料、デザイン料など) - 配当金(みなし配当を含む
- 国内源泉所得で非居住者または外国法人に対する一定の支払い
(国内の不動産の賃貸料、購入対価。国内業務に係る工業所有権や著作権等の使用料またはそれらの取得対価。国内業務に係る給与その他の人的役務の報酬)
復興特別所得税の計算方法は次の通りです。
- 確定申告をする個人
復興特別所得税額=すべての所得に対する所得税額(外国税額控除額を控除する前の所得税額)×2.1% - 源泉徴収義務者
源泉徴収すべき復興特別所得税額=本来源泉徴収すべき所得税額×2.1%
実務においては計算便宜上、源泉徴収の対象となる支払金額に対し、本来の徴収税率の102.1%相当である率(=合計税率)を乗じて源泉徴収すべき所得税額と復興特別所得税額を計算します。
源泉徴収事務のポイント
給与等
- 毎月の給与
平成25年分の毎月の給与を支給する際は、復興特別所得税の負担が加味された「源泉徴収税額票(平成25年分)」を使用して源泉徴収を行います。表の使用方法は平成24年分以前のものと変わりありません。最新版の源泉徴収税額票は国税庁のHPで閲覧やダウンロードが可能です。 - 賞与
平成25年分の所得となる賞与を支給する際は、給与と同様に復興特別所得税の負担が加味された「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成25年分)」に基づき、賞与の金額に乗ずべき率(0~40.84%)を求め、源泉徴収税額を計算します。 - 退職金
平成25年分の所得となる退職金を支給する際は、復興特別所得税の負担が加味された「平成25年分以降の退職所得の源泉徴収税額の速算表@またはA」を使用して源泉徴収を行います。@は所得税を算出してから102.1%を乗じて徴収額を求めるタイプの速算表、Aは初めから合計税率を乗じて徴収額を求めるタイプの速算表です。
課税退職所得金額 (A) |
所得税率 (B) |
控除額 (C):円 |
源泉徴収税額 |
---|---|---|---|
1,950,000円以下 | 5% | 0 | (A×B−C)× 102.1% |
1,950,000円超〜 3,300,000円以下 | 10% | 97,500 | |
3,300,000円超〜 6,950,000円以下 | 20% | 427,500 | |
6,950,000円超〜 9,000,000円以下 | 23% | 636,000 | |
9,000,000円超〜18,000,000円以下 | 33% | 1,536,000 | |
18,000,000円超〜 | 40% | 2,796,000 |
課税退職所得金額 (A) |
所得税率 (B) |
控除額 (C):円 |
源泉徴収税額 |
---|---|---|---|
1,950,000円以下 | 5.105% | 0 | A×B−C |
1,950,000円超〜 3,300,000円以下 | 10.210% | 99,547.5 | |
3,300,000円超〜 6,950,000円以下 | 20.420% | 436,477.5 | |
6,950,000円超〜 9,000,000円以下 | 23.483% | 649,356.0 | |
9,000,000円超〜18,000,000円以下 | 33.693% | 1,568,256.0 | |
18,000,000円超〜 | 40.840% | 2,854,716.0 |
いずれの速算表を使用した場合も税額は同じになりますので、自社にとって使いやすい速算表を使用してください。
- 報酬、料金等
平成25年分以降の所得となる報酬、料金等を支払うときには、本来の徴収税率に102.1%を乗じた合計税率を用いることになります。実務では、報酬、料金等の支払先である各種士業や専門の業者からの請求に基づいて支払いをしますが、念のため、自社経理部門においても計算内容を確認するほうがよいでしょう。
報酬、料金等は前述した給与、賞与や退職金などと同様、たとえ先方の請求ミスであっても源泉徴収税額(所得税及び復興特別所得税)の納付漏れには、不納付加算税が課されることがあるので注意が必要です。 - 配当金
株主に対して実施する配当で、その効力発生日が平成25年1月1日以後となる配当金については、所得税に加えて復興特別所得税を徴収する必要があります。
所得税・復興特別所得税の納付(還付)
- 確定申告をする個人
所得税・復興特別所得税の申告書の提出期限までに、その申告書に記載した納付すべき所得税・復興特別所得税の合計額を合わせて納付(納付書による納付または振替日に引落し)します。
なお、所得税額を復興特別所得税額の計算上、控除しきれない予定納税額(復興特別税額を含む)と源泉徴収税額(復興特別税額を含む)については還付されます。 - 源泉徴収義務者
給与や報酬等から源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、それらを支払った月の翌月10日(納期の特例の承認を受けている場合、1月から6月分を7月10日、7月から12月分を翌年1月20日)までに1枚の源泉徴収高計算書(納付書)で納付または電子納税により納付します。
復興特別所得税の源泉徴収の要否について迷うケース
計算期間が平成24年末をまたぐ賞与や退職金を平成25年1月1日以降に支給する場合
契約または慣習等により定められた支給日が収入すべき時期として所得の帰属年分となりますので、その支給額の全額について復興特別税を徴収することになります。その場合、計算期間を平成24年以前、平成25年以降というように支給額を月割りや日割りで区分することはありません。
復興特別所得税を含んだ年末調整について
給与、賞与について毎月の源泉徴収を所得税と復興特別所得税を合算して行っているので、年末調整の計算も所得税と復興特別所得税の合算で行います。
受給者への超過還付額または不足徴収額のもととなる年調年税額は次のように計算します。
年調年税額=年調所得税額×102.1%(100円未満切捨)
利子等を受け取った際の控除金額の経理処理
預貯金の利子や株式、出資金の配当金の受取時に徴収された復興特別所得税額は、法人税額から控除する所得税額に準じて、課税事業年度の復興特別法人税額から控除されます。したがって、例えば平成25年1月1日以後に普通預金の利息を受け取った時の経理処理は次のようになります。
例)
※1:グロスアップ計算 797÷(100%−15.315%−5%)=1,000(1円未満切捨)
※2:1,000×15.315%(所得税・復興特別所得税)
※3:1,000×5% (住民税)