社員旅行費用の基本的な扱い
(月刊「企業実務」2012年11月より)
社員旅行を実施する場合、福利厚生の一環として、会社が費用の一部または全部を補助(負担)するケースが多いでしょう。
社員旅行の費用を会社が負担した場合、税務上は次のいずれかの取り扱いとなります。
- 福利厚生
- 給与
福利厚生であっても給与であっても、負担する会社の側では経費として損金の額に算入されますが、従業員の側の税務上の取り扱いは異なってきます。
まず、レクリエーションとして社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担した場合、これらの行事に参加した役員または使用人が受ける経済的利益については、課税しなくていいとされています。
これは、供与する経済的利益の額が少額の場合には、少額不追及の趣旨から課税されないこととされているからです。
そして、社員旅行が次の2つの要件をいずれも満たすときは、原則として給与課税はされないものとされています。
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旅行の期間が4泊5日以内であること
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旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること
(1)の4泊5日以内というのは、海外旅行の場合には、外国(現地)での滞在日数が4泊5日以内であることを意味します。また、(2)の参加人数について、全社一斉ではなく、工場ごと、支店ごとなどの区分で社員旅行を行う場合には、それぞれの職場ごとで50%以上が参加することが必要になります。
また、給与となる社員旅行費用としては以下のケースが考えられます。
- 不参加者への現金支給
自己の都合で社員旅行に参加しなかった従業員に対し、会社負担(補助)分を現金で支給した場合には、給与として課税されます。
ここで、給与課税が行われるのは、現金を受け取った(参加しなかった)従業員にとどまらず、「4泊5日以内」「50%以上が参加」という要件を満たしていても、現金で受け取った不参加の従業員のみならず、社員旅行に参加した従業員についても課税されてしまいます。ただし、会社(業務)の都合で不参加となった従業員に対し、同様の現金を支給した場合には、現金で受け取った従業員のみ給与課税が行われます。つまり、社員旅行に参加したほかの従業員までは課税されません。 - 役員給与に該当する場合
役員給与の場合には、一般の従業員に対する給与と違い、法人の損金算入に一定の要件があります。社員旅行に関する経済的利益が役員給与に該当する場合、その経済的利益は、役員給与の損金参入要件(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与)のいずれにも該当しません。したがって、その経済的利益は臨時的なものとして、支払う会社側においても損金の額に算入されません。
なお、一般の従業員は参加せず役員だけで行う旅行は、そもそもレクリエーションとしての社員旅行とは言えませんので、その費用を福利厚生費として損金の額に算入することはできません。同様に、取引先に対する接待、供応、慰安などのための旅行も、レクリエーションではないので、交際費として処理するのが相当ということになります。