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    経営改善と金融支援が同時に受けられる
    「経営力強化保証制度」の内容と上手な利用法教えます。

    2012年の秋にスタートした経営力強化保証制度をご存知でしょうか?

    この制度は中小企業が外部の専門家の力を借りながら、経営改善に取り組む場合に信用保証協会が保証料を減免するというものです。具体的には、経営革新等支援機関の認定を受けた銀行や税理士などから指導を受けて経営改善に取り組む場合に、保証料が概ね0.2%程度減免されます。つまり経営の状態を改善すると同時に、金融面でサポートを受けられる制度なのです。ここでは経営力強化保証制度の詳しい内容と利用の仕方をアドバイスします。

     Q1 そもそも経営力強化保証制度とはどんな制度なのでしょうか?

    経営力強化保証制度とは、中小企業の資金調達に当たって、金融機関が認定経営革新等支援機関(Q4を参照)と連携して、中小企業の事業計画の策定支援や継続的な経営支援を行い、中小企業の経営力の強化を図ることを目的に、信用保証協会が創設した保証制度です。

    この制度を用いることにより、普通保証2億円以内、無担保保証8000万円以内の事業計画の実施に必要な事業資金に対し、申込時の信用力に対応した保証料率よりも一区分低い料率で、信用保証協会付融資を受けることができ、中小企業が認定経営革新等支援機関の支援を受けて、経営改善に取り組み場合には、信用保証料を概ね0.2%減免されています。また、原則として法人代表者以外の連帯保証人を必要としません。

    保証協会 図

     Q2 どういう目的でつくられた制度なのでしょうか?

    資金繰りの窮した中小企業を救済するため、金融機関からの借入金に対し、元本返済を猶予し、金利のみの返済とすることを認めた「中小企業金融円滑化法(いわゆるモラトリアム法)」が平成25年3月31日をもって廃止されました。

    中小企業金融円滑化法廃止後の中小企業の資金需要に対応するため、平成24年6月、新たに「中小企業経営力強化支援法」が策定されました。これは、「中小企業の海外における商品の需要の開拓の促進等のための中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律 を一部改正する形で策定されたものです。

    中小企業経営力強化支援法は、(1)既存の中小企業支援者、金融機関、税理士・税理士法人等の中小企業の支援事業を行う者を認定し、中小機構による専門家派遣等による支援活動をバックアップするとともに、(2)ものづくり産業のみならず、高付加価値型産業(クールジャパンとしての地域産業資源、農業、コンテンツ産業等)も世界に発信可能な潜在力を有する中で、中小企業の海外展開を促進するため、日本政策金融公庫及び日本貿易保険を活用した海外子会社の資金調達を円滑化することを目的に策定されています。

    ここで取り上げている「経営力強化保証制度」は、中小企業経営力強化支援法の2つの目的のうち(1)にかかる資金調達を円滑にするために創設されたものです。

    しかし、中小企業金融円滑化法とは異なり、「新商品の開発」、「新サービスの提供」、「新たな生産、販売方式の導入」等、新たな取組を行い、経営の向上を図る経営革新新計画を策定することが求められていますから、旧態依然の事業を継続するための支援ではないことを頭に入れておく必要があるようです。

     Q3 ちいさな企業“未来補助金について教えて下さい。

    経営力強化支援制度では、融資の際における保証料の減額等のほかに、新たに起業・創業しようとする個人や後継者による第二創業を図る個人や中小企業を対象にして、ビジネスプランを審査した上で評価された事業計画に対して、計画の実施に要する費用の一部を助成する補助金制度も用意しています。(執筆時点では確定していません)

     これは、事業計画策定の段階から認定経営革新等支援機関の支援を受けて起業・創業や第二創業を図る個人や中小企業を対象としたもので、

    1. グローバル市場への迅速な事業拡大を目指す「グローバル成長型起業・創業」
    2. 若者活力・女性力を活かして地域ニーズに応える「地域需要創出型起業・創業」
    3. 先代から引き継がれた知恵や資産を活用し新事業に挑戦する「第二創業」

    の3パターンに応じた支援が受けられるようになっています。

     詳しくは、中小企業庁HP、小さな企業未来会議討議資料をご確認下さい。

    http://www.chusho.meti.go.jp/miraikaigi/2012/download/0622Torimatome-2.pdf

     Q4 経営改善支援センターの役割について教えて下さい。

    借入金の返済負担等、財務上の問題を抱えていて、金融支援が必要な中小企業・小規模事業者の多くは、自ら経営改善計画等を策定することが難しいのが実情です。こうした中小企業・小規模事業者を対象として、認定経営革新等支援機関が、中小企業・小規模事業者の依頼を受けて経営改善計画などの策定支援を行うために、全都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会に平成25年3月に新設されたのが「経営改善支援センター」です。

     この事業において、中小企業・小規模事業者が認定経営革新等支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及びフォローアップ費用の総額につき、経営改善支援センターが、3分の2(上限200万円)を負担することとされています。

     この制度の適用を受けるには、直近3年間の申告書及び履歴時効全部証明書(会社の謄本のことです)を添付して、経営改善支援センターに申し込むことが必要です。

     各地の経営改善センターの連絡先は中小企業庁下記HPより確認することができます。

    http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/2013/0308KaizenKeikaku6.pdf

     Q5 認定経営革新等支援機関とはどういう方々なのでしょうか?

    独立行政法人中小企業基盤整備機構において指定された研修を受講し、試験に合格した中小企業支援者に対して、国が認定することで、中小企業の財務内容等の経営状況の分析や事業計画の策定支援・実行支援を行うための支援体制を整備するために創設されたのが認定経営革新等支援機関です。

     具体的な認定基準として、

    1)税務、金融及び企業の財務に関する専門的知識を有していること

    士業法や個別業法において、税務、金融及び企業の財務に関する専門的知識が求められる国家資格や業の免許・認可を有すること、又は経営革新計画等の策定に際し、主たる支援者として関与した後、当該計画の認定を3件以上受けていること、又は同等以上の能力を有していること。

    2)専門的見地から財務内容等の経営状況の分析等の指導及び助言に一定程度の実務経験を有すること

    経営革新等支援業務に係る1年以上の実務経験を含む3年以上の中小企業に対する支援に関し実務経験を有していること、又は同等以上の能力を有していること。

    3)長期かつ継続的に支援業務を実施するための実施体制を有すること

    支援業務を実施するに必要な組織体制(管理組織や人員配置等)や事業基盤(財務状況の健全性や窓口となる拠点等)を有していること。

    が挙げられ、平成25年2月1日の第3次認定まで約4500機関が認定されています。ちなみに、私も第3次認定で認定を受けました。

    認定支援機関の一覧は、中小企業庁下記HPにおいて公開されています。

    http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/index.htm

     Q6 経営力強化保証制度を利用するとどんなメリットがあるのでしょうか?

    目に見えるメリットとしては、申込時の信用力に対応した保証料率よりも一区分低い料率で、信用保証協会付融資を受けることができ、保証料率も0.2%程度削減できることが挙げられます。

    しかし、最大のメリットは、認定経営革新等支援機関による事業計画策定支援を受けることにより、経営状態が明確化され、自社の目標とその目標までの過程が明確化されることによって、社員の意識が向上することにあると考えられます。また、新商品へのチャレンジにより、売上や販路の拡大、ブランド価値の向上、対外的信用の向上等の派生的なメリットが生まれることも考えられるでしょう。

    また、月次決算等を活用することにより、自社の経営状況を適時に把握できるようになり、財務情報の適時性・信用性が高まる結果として、金融機関の融資を受けやすくなり、資金調達力が強化されることも考えられます。

    また、認定経営革新等支援機関による支援は、事業計画の策定に留まらず、期中における事業計画の修正への対応を通じて経営改善に役立つものですから、状況の変化に対応した経営改善を行うことが期待されています。

     Q7 経営力強化保証制度を利用するためにはどうすればいいのですか?

    この制度を利用するためには、融資を実行する金融機関を窓口にして、通常の融資の際に必要とする申込資料ほか、「経営力強化保証」申込人資格要件等届出書、事業計画書、認定経営革新等支援機関による支援内容を記載した書面を提出しなければなりません。

    そのため、この制度を利用するためには、あらかじめ認定経営革新等支援機関と支援内容を打ち合わせ、その支援を受けながら事業計画書を策定することが求められます。

     この制度を利用するためには、金融機関や認定経営革新等支援機関の支援を受けつつ、自ら事業計画の策定ならびに計画の実行を行うとともに、四半期ごとに金融機関への当該計画の進捗報告を行うことが必要です。

    保証料引下げの条件として、事業計画策定支援のみではなく、期中における支援を受けることが求められていることには注意が必要です。

    詳しくは、信用保証協会HPこの制度のパンフレットをご確認下さい。

     Q8 経営力強化保証制度を利用するときに注意すべき点はありますか?

    経営力強化保証制度は、金融支援をはじめ、苦しい経営を続ける中小企業にとって有用な仕組みになっている半面、認定経営革新等支援機関の支援を受ける際には、苦言を呈されるケースも多くなることも考えられます。

     事業計画を明確にする必要があるだけではなく、四半期ごとに金融機関に計画の進捗状況を報告し、その都度、必要な修正を加える必要があることを考えると、認定経営革新等支援機関と綿密に打ち合わせを重ねていく必要があることを忘れてはなりません。

    自ら策定する経営計画に対して期中支援を受けることを前提とした制度設計ですから、社内の管理体制を再構築する必要に迫られることも考えられるでしょう。

     事業計画・経営計画の策定は、会社の将来設計を見える化する作業になりますから、経営者の事業に対する思いや将来の人生設計まで考えて頂く必要も出てきます。経営者の皆様方には、これを機に、創業当時の思いを思い出して頂き、経営体制の再構築を行って頂きたいところですね。

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